「おっ・・・ちょっと琴音!!繭が来たよ!」
昼休み。今日はパンと牛乳というなんとも質素なお昼ご飯。
私はその言葉を聞いて、飲んでいた牛乳をブハッと机に吐いた。
「きったなぁ〜!なーに吐いてんの!繭行っちゃうよ。」
「そんなこと言ったってぇ・・・うえぇ・・牛乳なくなっちゃったよ。」
私、堀田 琴音(ほった ことね)中学3年生。受験で忙しい学年だから、恋なんてするヒマない。っていうのはウソ。現在バリバリ好きな人がいるんです。
「もぉ〜・・・琴音がぐずぐずするから行っちゃったんだよ?」
私の短所、それはものすごく内気で人とコミュニケーションが上手くとれない。
「赤坂くんもういないの・・・・?」
私はキョロキョロとあたりを見回した。・・が、赤坂くんとやらはいない。
「とっくに行っちゃった!せっかくのチャンスが!」
渚がフーッとため息をついた。
こちら、私のゆういつの友だち江中 渚(えなか なぎさ)。そして私の好きな人とは、渚の幼なじみ赤坂 繭(あかさか けん)なんだ。
赤坂くんは昼休みになると、いつも男子のグループのところに行ってしまう。せっかく同じクラスなのに、そんな大勢の男子の前で話すことなんてできるはずない。更に、私は話し上手ではないという残念なことに。
不意に赤坂くんの方を見ると、赤坂くんがジーッとこっちを見ている。
「ねっ・・・ねぇ渚!赤坂くんがこっち見てる!」
「あ、ホントだ。ヨカッタじゃん琴音♪」
赤坂くんが手をメガホン型にしてこっちに向かって叫んだ。
「おーい、渚!ちょっと150円貸してくんねぇ?」
それを聞いた瞬間、私はガックリした。赤坂くんは私にじゃなくて、渚に用があったんだ。
「え、150円!?小銭持ってないんだけど・・・。あ、そうだ!琴音に貸してもらえば?」
何か言おうとした私に、渚はひじ打ちをくらわした。
「あ・・・堀田、お前小銭持ってるか?」
赤坂くんが向きを変えて、今度は私に叫んだ。
・・・・赤坂くんに話してもらえた・・・・!
「う・・・ぅん!持ってるよ・・・。」
「お☆じゃ、貸してくんねぇかな?」
「いいよ。」
な・な・なんで!なんで私はこんな素っ気ない返事しか出来ないんだろ?
いつもこんな自分がイヤになってくる。
赤坂くんは、スタスタと歩いて小銭を受け取った。
「サンキューな♪また返すから!」
笑顔で手を振ると、自販機のところへ走って行ってしまった。
「琴音!ヨカッタね!!」
渚が私に抱きついてきた。
「ぅん・・・・。」
ヨカッタはヨカッタんだけど・・・私、もっと話し上手になりたいなぁ・・・。
赤坂くんは誰とでもすぐに仲良くできるタイプだ。それに比べて私と来たら・・・
「元気だしなって!そうだ、今日この町の大広間にお菓子屋さんがくるよ!」
「え、そうなの?」
お菓子屋さんとは、5ヶ月に1度、この町の大広間にやってくるワゴン車のお菓子屋さんのことだ。それがまたすっごいおいしいんだよなぁ〜
「帰りにいかない?」
渚がわくわくした目で私を見つめた。
「もちろん、行くよ!」
「それじゃぁ決まりだね!」
そのときはまだ、あんなことになるなんて予想してなかった・・・・
そのときはまだ・・・・・。
*つづく*