魔法のチョコレート 第13話

とうとう今日は30日目。今日で渚生活も終わりなんだ・・・。嬉しいような、悲しいような・・・・


つい何日か前、私は赤坂くんの一部始終を渚に聞かせた。聞いている渚の表情が、みるみるうちに曇っていくのを見た。
話している間も、ただただ、しきりにうなずくだけだった。

「信じらんない・・・・ありえないよ!!」
渚は今にも泣きそうな声で言った。私は心の中で大泣きしているけど。
「なんで・・・・なんで私・・・・?」
渚はものすごく動揺している。
「琴音の・・・・気持ちも知らないで!!!」
そして激怒した。
「渚・・・落ち着いて・・・もぅ、良いんだよ・・・・」
私の頬を涙がつたった。本当は良くない。だけど、しかたがない。

「赤坂くんは渚を選んだ。ただ、それだけ・・・・だよ。」
涙が大粒となっていくつも目からあふれ出てくる。
・・・・止まってよ・・・・・・恥ずかしいじゃん・・・・・
「琴音・・・・・・・!」

渚は私のトナリに寄り添って慰めてくれた。
「まだ、まだ分からないよ?あきらめちゃダメだって」
「けどっ・・・・・」
「でほえ、ああさかふんのずいなひとはないさで・・・・・」
日本語になっていない。
”でもね、赤坂くんの好きな人は渚で・・・・”と言ったつもりだったが、泣くのと同時だったから、渚にはまったく通用していなかった。
「うんうん・・・・」
渚は私が泣きやむまでずっとトナリにいてくれた。それだけで、私にとっては大きな心の支えだった。

ようやく私は泣きやんで渚を今日初めて真っ正面から見た。
「今日はありがとう・・・・・ホント感謝してるよ・・・・・」
「そう・・・・?それはよかったよ・・・^^」
渚はホッとした様子で立ち上がると、うーんと背伸びをした。
泣いているウチに、まだ、あきらめないで頑張ろう・・・・。
そんな気持ちになっていた。これも渚のおかげなんだ。


そして次の日、私は赤坂くんをふった。もちろん、渚の姿で。
「そ・・・か。渚・・・・幸せになれよな!」
赤坂くんは優しい、悲しそうな表情で笑ってくれた。胸がキュンってなるのをムシして、私は心と裏腹な事を言った。

「じゃ・・・・ね、バイバイ。」
「オウ」
このバイバイは、また明日というバイバイではない。私はそう思った。


こうして今日。私は渚と向かい合って立っている。もうすぐもとに戻るだろう。
ここはとある公園。なぜ公園でするのかは謎だが、渚は公園でもとに戻ろうと言った。
「そろそろ・・・・・だね?」
ゴクンとつばを飲み込んで渚が言う。
「・・・・・だね。」
私はコクンとうなずく。
30日間、大変だったけど赤坂くんとたくさん話せて夢のようだった。そんな夢も、もう終わりを告げる・・・
あと1分で、ちょうど30日前、チョコレートを食べた時間と重なる。多分、その時間でもとに戻る。
「私、もとに戻ったらトオルのところに特急で行ってやるんだ。」
渚はイヒヒッと不気味に笑った。
一体トオルに何をするつもりだ・・・・・。と心配しつつも私は同じように笑った。
あと10秒・・・・・
9・・・・・8・・・・・・・7・・・・・・6・・・・・・5・・・・・4・・・・・3・・・・・2・・・・1

                 ”0”

それと同時に私はチョコレートを食べたときと同じように気を失った。
この30日間、ホントに楽しかったよ・・・。
ね、渚?ね、赤坂くん・・・・・・?

                             *つづく*