「ほっ・・・・本当に決まってる・・・よ。」
亜麻音はドギマギしながら答えた。
「ふーん。あ、そ。」
そう言い、桑田は握っていた手に力を込める。
「う・・・」
「・・・・・・」
長い間、2人はなにも言わないままずっとその状態でいた。ついに、亜麻音が耐えきれなくなってパッと手を離した。
「や・・・・やめて・・・なんか恥ずかしい。」
すると桑田はフッと笑みをもらした。
「おもしれ。須川って、自分の思っていること言えないタイプだろ。」
「え・・・・それってどういう意味・・・・!」
亜麻音が聞くか聞かないかのうちに、桑田はスタスタとカラオケルームに戻っていった。
「・・・なによ〜・・・。相変わらず意味が分からない!」
ブツブツ文句を言ったモノの、さっきに桑田の言葉は深く心に刻み込まれるのだった。
・・・・図星だから・・・・
なんで分かったんだろう?なんか桑田って、人の心読める能力でもあるのかな?なんでもお見通しのような目でモノを見ている。
恐くはない。逆に、桑田といると辛いことも説明なしで理解してくれるみたいだから安心だってする。
考えれば考えるほど、なんだか気落ちするばかりだったので亜麻音は考えることをやめ、仕方なくカラオケルームに戻った。
室内に戻ると、佐和が歌っていた。もう何曲も歌ったようで、声がかれている。
佐和が歌い終わると、ワーッとみんなが歓声をあげた。
「あ、亜麻音!!」
佐和は亜麻音に気がつくとタッタッタっと小走りで亜麻音の方へ寄ってきた。
「ど、ど、ど、どうしよう!!!」
かなり興奮気味のようだった。
「ま、まぁまぁ落ち着いて。何があったの?」
「あ、あ、あのね。なんと、森くんのアドGETしたんだよ!」
「え、ホントに!?やったじゃん!おめでとう、佐和♪」
亜麻音がムリをして笑っているのに気付いた佐和は顔をしかめる。
「亜麻音・・・・?どうかした?」
「ん?別になんにも!!」
「そんなことない!・・・やっぱり、私を応援するのは悲しいんじゃないの・・・?」
「え・・・」
「だって・・亜麻音は森くんの事好きだもん。私悪いことをしてるんじゃないかな・・・」
「・・・そんなこと・・・」
「正直に言って。」
佐和は真剣なまなざしで亜麻音を見つめた。
「・・・分かった。確かに、ものすごく辛い。辛くて切なくて、涙が出そうになっちゃうよ。佐和が森と仲良くなっていくたび、
胸がうずく。と・・・っても苦しいんだ。」
そこまで言うと、佐和はほぼ泣き顔になっていた。
「でも、ね。」
亜麻音は言葉を切らずに続ける。
「そんな気持ちでも我慢してるんだ私は。なんでだと思う?」
「・・・・」
「それはね、佐和への恩返しなんだよ。それに、佐和には後悔した気持ちを味わってほしくない。」
あと、もう1つ理由があったがそれは伏せておいた。”森が佐和のことを好きだから”という理由だ。
やっぱり、好きな人には幸せになってほしい。正しい答えなんか分かるはずないけど・・・
「亜麻音・・・・。でも、私も亜麻音に幸せになってほしいんだよ。」
「分かってる。その気持ちはありがたく受け取っておくから・・・ね?ホラ、私の事は気にせずに、アタックだよ!」
一滴の涙を流しながら笑顔を見せる亜麻音は、今までで一番大人っぽく、きれいに見えた・・・。
「・・・・ん・・・。分かった・・・・。私、がんばるよ!」
「そうそう!!」
亜麻音はチラッと桑田の方を見た。桑田は亜麻音たちのやりとりを聞いていたみたいで、すぐに亜麻音と目が合った。
「・・・・これが本心だから。」
「・・・いいじゃん。別に。」
こうして亜麻音たちは収穫ありの有意義な一日を過ごした。
「あー、楽しかったね!」
「うん、あ、そうだ。日記書かなくちゃ。」
佐和はカバンをガサゴソいわせ、手帳を取り出しながら言う。
サラサラと佐和が記していくのを亜麻音はジッと見た。
森のアドレスもきっちりかきとめられてあるようだ。最後は”楽しかったな♪”で書き終わった。
そして、書き終わったと同時にまた変な現象が起きた。
日記に入り込むときと同じように・・・・・グルグル回転し、亜麻音たちは気がつくと机に突っ伏していた・・・・。
*つづく*
