その瞬間、とんでもないことが起こり始めた。なんと、教室がグルグル回っている・・・
「え・・・!なにコレ!?」
佐和は腰が抜けた様子であたりを見回す。
「分かんない・・・一体なにが!?」
教室はみるみるウチに速度を上げ、目が回りそうだ。
そしてー・・・今度は2人の体に異変が起きだした。
「なんか、体がひねりあげられてるみたいな感じがする!!!」
「佐和、大丈夫!?・・・あれ?私もなんかそんな感じがする・・・なんだろ、吸い込まれてるって感じかな?」
「ウンウン!!そんな感じだよー;」
ピカッと稲妻が走ったような気がし、2人はまぶしくて目を閉じた。
「う・・・ん・・・?」
亜麻音が目を開けた。なんか、ざわめき声が聞こえる・・・?
トナリにいた佐和はすでに目を開けて呆然とあたりを見回していた。
「ねぇ、亜麻音。なんで森くんがいるんだろうね?」
意味不明な事をボソリとつぶやいた佐和は、亜麻音の方を向く。
「ホラ、亜麻音!!黒板を見て!『5月12日』になってるよ!!!」
興奮気味に佐和が言い、亜麻音はまさかそんなはずはと黒板を急いで見た。
「ホントだ・・・」
確かに、黒板には『5月12日』と書かれている。おまけに、周りは亜麻音のクラスメイトが大勢いた。
「オイ、みんなぁ!今日カラオケ行こうぜ!」
声のもとをさがそうとした亜麻音は心臓がでんぐり返りそうだった。いや、止まっていたかもしれない。
「なんで・・・森がいるの・・・・?」
「ね?ね??いるでしょ?私思ったんだけど、コレ日記の中じゃないかな?」
「ウソ!?んなわけないよ!!;」
「でも、日にちがそうじゃない。」
「う・・・・」
信じがたい事だったが、どうにも信じるしかないようだ。森のトナリには無愛想で無口でクールな桑田がこちらを見ていた。
なぜかは分からないが、相変わらずの無表情。
「佐和、これはチャンスだよ!」
「え?」
「今日の塾休んじゃいなって!そしたらカラオケに行ける・・・。やり直せるよ!!」
「でも、・・・日記の中でそんなことしたって、変わらないような・・・。」
「そうかもしれないけど、やらないよりはマシ!多分、やり直させてくれるように神様がこうしてくれたんだよ!!」
「・・・亜麻音って、なんか非現実的なこと平気で言うのね。・・面白い。そのチャンス、頑張ってみようかな。」
クスクス笑ってから佐和は森の方を見つめながら言った。
「そうと決まったんなら、私は2人のために最善を尽くすからね!」
亜麻音がウインクをしてVサインを出す。
「亜麻音・・・ホンットにありがとう!!!」
そんなやりとりをしていると、森と桑田がこちらへ来た。
「なぁ、桜井と須川はカラオケに行くか?」
「え、あ・・・」
佐和の顔が真っ赤になったものだから、亜麻音があわててフォローをする。
「もっちろん!!カラオケ久々なんだよねー♪ね?佐和ももちろん行くでしょ?」
「う・・・うん・・・。」
「よし、これで全員だな。」
ニコッとして森が笑った。佐和は森に完全にお熱のようだ。
こういう可愛いところに森は惚れたんだよね。(多分だけど)
胸の奥がチクッと痛くなったのはまったくもって無視して亜麻音は2人を笑顔で見た。
そして、放課後。佐和はずっとそわそわして落ち着かない様子だ。まぁ、ムリもないかもしれない。頑張って、佐和!
各自カラオケボックスの前に集合だったので、みんなはぞろぞろと教室を出始める。
森はまだ帰る準備をしているところだった。
そのとき、亜麻音はあることを思いだした。もしこの記憶がホンモノならば・・・
「ね、佐和。」
亜麻音は佐和の方へ寄っていき、小声で話しかけた。
「私の記憶ではね。森は桑田に先に行っててくれって言って、一番最後に教室を出るんだ。だからね、一緒に行けばいいんじゃないかな?」
「そうなの!?・・・じゃぁ亜麻音はどうするの?」
「私は先に行ってるから大丈夫。心配しないで。」
「ありがと」
亜麻音は「先に行くね。」と言い、教室をでた。もうそのときにはほんの数人しか残っていなかった。
下駄箱で靴を履き替えていると、桑田も下駄箱で靴をはき始めているところだった。
「あ、桑田。1人だったら一緒に行かない?」
「・・・・・・・・ぃぃけど・・・・」
小さな声で聞き取りにくかったが、なんとか聞き取れた。
一緒に道を歩いていると、ふと亜麻音が口をもらす。
「そういえば、桑田と話すのって初めてだよね?」
「・・・ウン」
「もぉー、なんでそんな無口なのー!?元気だして!!」
そう言うと、桑田はハァとため息をついた。・・・なんか、あきれられている・・・・?
「なんか、お前元気すぎ・・・。見てて痛くなる。」
またまた小声ではあったが、口数が多かったので亜麻音は感激の様子で答える。
「見てて痛いって、どういう事!?なんかあんまり嬉しくないような!?」
なぜか不思議とテンションが高かった。こういうの、「空元気」っていうやつ?
「・・・・・・・・」
亜麻音のハイテンションな答えに、桑田は応じなかった。
こいつ、結構面白いかも・・・・
少し小さな発見をする亜麻音であった。
*つづく*
