ダイアリー 第2話

「もしかして・・・読んだ?」
佐和がかなり心配した様子で訪ねてきた。
亜麻音はいいわけを考えたが、良い案が浮かばず結局本当のことを口にした。
「・・・ゴメン!!読んじゃった・・・」
佐和はイスに倒れ込むようにしてドサッと座った。
「読んじゃったんだ・・・」
「ホントゴメン!!!今日何かおごるから・・・って、そんなんじゃダメだよね。」
自分でだめ押しをしてそっと佐和の方を見てみると、なんと佐和は力なく笑っていた。
「いいの・・・。言わなくちゃって思ってたんだし。」
「・・・・?」

「私、森くんが好きなの。」
知ってはいたが、やはり亜麻音にとってはとても痛い言葉だった。
「うん・・・知ってる。」
「でも、もう遅いんだよね。気付くのが遅すぎたよ・・・。私、ダメ女だよ・・・」
涙が溢れてきたのを見て、亜麻音はオロオロとした。何をしていいのか分からなかった。
しかし、次の佐和の一言を聞くとすることが分かった。”驚く”だ。
「それに、私知ってるんだ。亜麻音が森くんのこと好きっていうのを。」
「え!!?」
衝撃的な言葉だった。知っていた!?ただ、それだけが頭にこだまする。
「ほとんど一目惚れだったでしょ。入学式のとき。もうバレバレだよ〜」
微妙に佐和は笑った。ムリをして笑っているときの顔だった。
「私ね、少し前ぐらいから気付いてたんだと思う。私が森くんを好きだ、ってこと。でもね、亜麻音も森くんが好きだからってずっと否定し続けていた。」
「そんなの・・・」
亜麻音は言いかけたが、佐和は言葉をはさむ間をくれなかった。
「私・・鈍いから。亜麻音みたいにすぐ気付なくって・・・もう、私完全にバカ!!!!」
わっと泣き崩れ佐和は机に突っ伏した。
「そんな・・・泣かないでよ!!ねぇ、佐和が泣いちゃったら私だって泣きたくなってきちゃうよ!」
必死でなぐさめ亜麻音に佐和は『ごめんね』としか言わなかった。


どれくらいそこにいただろうか。亜麻音は佐和のトナリの席に座ってずっとだまっていた。ある考え事をしていたのだ。
「・・・よし!私にまかせてよ!!私が絶対佐和と森を両思いにさせてあげるー!」
「え・・・ダメよ!だって、亜麻音だってあの人のことを・・・」
言いかけた佐和を亜麻音はさえぎった。
「そんなの関係なーし!私ね、佐和に幸せになってほしいんだよ♪しかもさ、今までずーっと佐和になにかしら甘えてきたから今度は佐和が私に甘える番だよ。」
これは本音だった。とてつもなく息苦しいような辛いような気持ちではあったが、佐和に幸せになってほしかった。
今まで佐和は自分のことをそっちのけにしていつも私を優先してくれた。自分がつらい道ばかり行って、私には楽な道を行かせてくれた。
だから・・・今回は私がつらい道を行く!正しいかどうかは分からないけど、私はそうする!!
亜麻音は決心したのだ。
さっきまで沈んだ気持ちだったけど、今はがんばろうって気持ちでいっぱいだった。
「亜麻音・・・本当に、あきらめちゃってもいいの?」
「いいよ!さぁ、私に甘えて・・・?」
「・・・亜麻音・・・・大好き!!!ありがとう!!!」
佐和が亜麻音に抱きついた。こんなこと初めてだった。いつもは逆だったからだ。
「よしよし、佐和ちゃん。私がなんとかしてあげますよ〜♪」
「なんか、そんなんじゃ心配だなー・・・」
2人は笑いあった。長い間、笑っていた。こんなにすがすがしい気分は久々で気持ちがいい。


「あ、そうだ。日記見せてくれない?」
突然、亜麻音がパンと手をたたいて言った。
「え?なんで・・?」
「なんとなく〜。いいでしょ??」
「え・・・うん、別にいいけど・・・」
「ありがと〜」
亜麻音は日記帳をパラパラめくって5月12日のところで止めた。
このときの日記はこうだった。


”5月12日_
  今日はクラスのみんなとカラオケ!!・・・のはずだったけど、なんと塾で行けなかったよー(泣))
  亜麻音や森くんとか、みんな楽しんだんだろうなぁ・・・。


「・・・どうしたの?」
佐和が亜麻音の肩をポンとたたいた。
「このとき・・・どうして行かなかったの?」
「え、それは塾だからだよ。」
「あ〜・・もったいないなぁ。せっかく森と話せるチャンスだったのに・・・ってか、佐和って森と話したことあったっけ?」
「う〜ん・・・1回だけかな・・・。」
「あっちゃー。。それは悲しいな;」

そんなやりとりのなか、亜麻音は沈んでいたときのことを思い出した。
森には好きな人が多分いる、という事だ。それはおそらく佐和だった。
なにかと佐和の方を見ていたし、佐和が発表とかするときやさしい目で見ていた。そういう事もあるから亜麻音は両思いにさせようと決心したのだが。

「この日に・・・行きたいよね。」
亜麻音がぽろりと言うと、佐和は
「うん・・・・」
と小さくうなずいたのだった。
          
                                        *つづく*